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熊本地方裁判所 昭和46年(ワ)84号 判決 1972年8月14日

原告 斉藤勇

被告 国

訴訟代理人 小沢義彦 ほか六名

主文

原告の請求をいずれも棄卸する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事  実 <省略>

理由

本件土地は、もと原告の所有であつたが、昭和二三年一〇月二日に被告が自創法第三条の規定により原告から本件土地を買収する処分をし、さらにこれを訴外山田宇作に対して売渡処分をしたこと、および右山田宇作ならびに同人から本件土地を譲り受けた訴外山田三男が本件土地を自主占有して遅くとも昭和三五年を経過するところに、右山田三男が取得時効の完成により本件土地所有権を取得し、そのために原告が本件土地の所有権を喪失するに至つたことはいずれも当事者間に争いがない。

ところで、原告は右買収処分が違法無効であることを前提として国家賠償法第一条第一項の規定に基づき被告に対し本件土地所有権を喪失した損害の賠償を請求しているのであるが、右買収処分がなされた日は前記認定のとおり昭和二三年一〇月二日であり、本訴の提起されたのが昭和四六年二月一三日であることは本件記録上明らかである。

してみれば、かりに本件土地についての右買収処分が原告主張のとおり違法無効であつて不法行為に該当するとしても、右買収処分のなされた昭和二三年一〇月二日から二〇年を経過することにより、原告主張の損害賠償請求権は除斥期間の経過によつて消滅したものといわなければならない(国家賠償法第四条、民法第七二四条)。したがつて、右期日以降に提起されたことの明白な原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がないことに帰着するので、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九八条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 美山和義 中村健 甲斐誠)

物件目録<省略>

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